第130回 損害賠償の基本的な考え方(相当因果関係)
弁護士の内田です。
やっと涼しくなってきましたね。ちょっと寒いくらいの、台風が来る前の、そんな空気感が好きで、このメルマガを執筆している9月9日がちょうどそんな天気です。
子どもの頃は、「夏と冬どっちが好き?」などとよく聞き合っていたもので、回答は半々くらいだったと思いますが、昨今は、ほとんどの方が冬と答えるのではないでしょうか。最近の夏は、暑すぎて、昔みたいにアウトドアを楽しむ気すら起きないですからね。
夏のレジャー業界へのダメージも深刻なようです。夏の経済の在り方自体も今後大きく変わっていくのでしょう。
さて、本日のテーマは「損害賠償の基本的な考え方(相当因果関係)」です。
前回、物の損害賠償についてお話しましたが、今回はもう少し話を広くして、損害賠償における相当因果関係という考え方についてお話します。
基本条文は民法416条なので、以下、引用しておきます。
(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
第2項の特別損害はとりあえずおいておくとして、第1項の通常損害について、どういう損害が「通常生ずべき」といえるかどうかを考える枠組みこそが相当因果関係という考え方です。
まず、相当因果関係という考え方では、債務不履行と損害との間に、1.条件関係が損害していなければならないとします。条件関係とは、あれなければこれなし、という関係です。しかし、条件関係だけで損害賠償の範囲を画すると、賠償の範囲があまり大きくなりすぎてしまいます。
バタフライエフェクトのような話ですが、たとえば、(1)自転車の部品を製作するメーカーA社が安全性に問題のある契約に定められた品質に適合しない部品を納品したとします(債務不履行)。(2)その部品を使って自転車を作成したメーカーB社の自転車を購入した消費者Cがその自転車を運転中に当該部品の破損で転倒し、そこを歩いていたDにぶつかり、自転車は破損し、Dは軽い怪我をしたとします。(3)Dさんがぶつかられた際にとっさに手を付いたのが不安定に積み上げられた荷物で荷物が崩れ、ちょうどその下を歩いていた親子2名EFが死亡したとします。(4)この親子EFが死亡したことで、精神的ショックでこの親子EFの親族Gが体調を崩して亡くなったとします。
この例でいえば、A社が品質不良の部品さえ作らなければ、Dが怪我をすることもなく、EFGが亡くなることもなかったわけです。あれなければこれなしの条件関係はありますよね。では、EFGの死亡という結果(死亡慰謝料や逸失利益の賠償)についてまでA社に負わせるのが妥当なのでしょうか。ちょっと疑問ですよね。
このように無限に広がりかねない損害賠償の範囲を画するのが2段目の、2.「相当性」という考え方です。こうした条件関係のある損害から、債務不履行者(行為者)の責任に帰するのが相当と評価できる損害のみ責任を負わせるとします。
そう、最後は、「評価」なんですよね。帰責するのが相当だと判断された場合には、債務不履行(行為)と結果との間には相当因果関係があるとして賠償が命じられることになります。特別損害については当事者の予見が要件になっていますが、予見していたのなら帰責してもよいだろうという、これも1つの評価枠組みなのです。これは、交通事故など契約関係にない場合の不法行為においても同じです。
民事にしても刑事にしても、悪い事をしたのだから発生した結果については全部その人(会社)に責任を負わせればよいではないか、という考え方もあるでしょう。しかし、法律は、人が適度に自由であれることに重い価値を置いています。
たとえば、上記のように何かミスをしたら無限に賠償義務を負ったり、即刻死刑だったりした場合、皆さんは安心して日常生活を送ったり、ビジネスをしたりすることができるでしょうか。怖くてできませんよね。家に引きこもってしまいたくなります。
人の活動が萎縮して止まらないように、法は常に責任の範囲を妥当なものにしようとしているんですね。
いかがだったでしょうか。
契約書の損害賠償の条項と契約解除の項目を見れば、大体、その契約書が自社に不利になっているのか予想が付きます。
典型例は、1.相手に故意又は重大な過失がない場合に損害賠償請求できないとする条項、2.相手が責任を負うとして賠償額に上限があるとする条項、3.相手だけが一方的に一定条件の下で契約を解除できるとしている条項です。これらの条項があった場合には、その契約書は他にも自社に不利になる条項がないかよく見た方がよいでしょう。
以上









